2012年03月04日

列車と電車

 テレビの旅番組などで、出演者が気動車に乗っているにもかかわらず「この電車は・・・」などと発言したりすることがある。鉄道ファンならば思わず突っ込みたくなるシーンだが、世の中の人が「電車=電気モーターで動く車両」という定義に忠実に従っているかというと、必ずしもそうではないようだ。路面電車が走っている地方都市だと、市内を走る路面電車を「電車」と呼び、JRを「汽車」と呼んだりするらしい。
 では、世の中で「鉄道」と総称されている乗り物を、鉄道会社自体はどう呼んでいるのだろうか。JR東日本の自動放送をよく聞いてみると、「○番線に参ります電車は・・・」と流れる路線と、「○番線に参ります列車は・・・」と流れる路線がある。前者は山手線、京浜東北線など、かつて「国電」「E電」と呼ばれていた路線が、後者は東海道線、宇都宮線などの中距離路線が当てはまる。
 一方私鉄に眼を向けると、私鉄路線は大きく分けて2つの異なる法律に準拠している。一つは鉄道事業法、もう一つは軌道法である。後者はいわゆる路面電車を対象としているが、一部の地下鉄なども含まれている。
 そもそも、電車と列車とではその発祥からして全く異なる。電車の起源は馬車軌道といって、主に都市部の短距離移動に用いられた馬が牽引する軌道に遡る。自動車もバスもない時代、市内交通は馬車が主役だったのだ。文明が進歩すると共に、さすがに馬だと輸送力に限界があるし、馬糞の処理も問題だということで馬車は電車へと姿を変えていった。そのため、初期の電車は単行、すなわち1両編成が原則であった。
 一方、列車の方の起源は、新橋−横浜間に誕生した蒸気機関車牽引の鉄道に遡る。主に都市間の貨客の移動に用いられ、今のJRの路線のほとんどがこちらを起源としている。最初は蒸気機関車が牽引していたのが、技術の進歩と共に牽引する機関車が電気機関車、ディーゼル機関車へと姿を変えて今も続いている。そして、頻繁に停車する旅客列車においては高い加速度を得られる電車の方が有利だということで、電車の技術を取り入れるようになった。機関車が何両もの客車を牽引するというスタイルの客車は今ではすっかり勢力を狭め、電車が幅を利かせている。
 その他、「インターアーバン」といって、当初から都市間の高速移動に電車を用いるという考え方に基づいて作られた路線もあって、近鉄大阪線や小田急線、現在の阪和線などが当てはまる。これは電車と列車の相の子といっていいだろう。
 改めて私鉄路線を見てみると、その発祥が電車であるものと列車であるものに大別できる。分類する際に一番分かりやすいのは軌間(軌道間隔)であろう。京阪、阪神、阪急、京王、京急など、その発祥が路面電車であるものは、路面電車に多く見られる1435mm、もしくは1372mmを採用している。1435mmという軌間は、古代ローマの馬車の車輪の間隔にまで遡ることができるそうだ。一方、南海、東武など、もともと蒸気機関車が客車を牽いていた鉄道の場合、JRの在来線と同じ1067mmを採用している。やはり、線路の上を走る車両は変わっても、線路の間隔を替えるのはなかなか難しいため、軌間にはその路線のDNAが色濃く残るようだ。
posted by rail20000 at 14:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 鉄道全般